この記事を共有する

2026年4月8日

介護食の種類と作り方ガイド|やわらか食・きざみ食・ミキサー食の違いと調理のコツ

介護食が必要になるタイミングと嚥下機能の評価

介護食への切り替えは、噛む力(咀嚼力)や飲み込む力(嚥下力)が低下したときに検討します。食事中のむせ、食べこぼし、食事時間の延長、体重減少などが見られたら、嚥下機能の低下サインです。誤嚥(食べ物が気管に入ること)は誤嚥性肺炎の原因となり、高齢者の死因の上位を占めます。

まずは歯科医師や言語聴覚士(ST)に嚥下機能を評価してもらいましょう。嚥下造影検査(VF)や嚥下内視鏡検査(VE)で客観的に嚥下の状態を確認でき、適切な食形態が判断されます。かかりつけ医や訪問歯科に相談することが第一歩です。

嚥下機能のレベルと対応する食形態

日本摂食嚥下リハビリテーション学会の嚥下調整食分類2021では、食形態を5段階に分けています。コード0(ゼリー状、嚥下訓練用)、コード1(均質でまとまりのあるゼリー)、コード2(まとまりのあるミキサー食・ペースト食)、コード3(やわらかい形のある食事)、コード4(通常に近いやわらか食)です。

段階を飛ばさず、嚥下機能に合った食形態を選ぶことが安全のために不可欠です。自己判断ではなく、必ず専門職のアセスメントに基づいて食形態を決めましょう。

介護食の4つの種類と特徴

介護食は大きく4つの種類に分けられます。それぞれの特徴と対象者を理解しましょう。

やわらか食(コード4相当)

歯ぐきや舌でつぶせるくらいの硬さに調理した食事です。見た目は普通食に近く、食欲を維持しやすいのが利点です。煮込み時間を長くする、圧力鍋を使う、酵素を使って肉を軟らかくするなどの工夫で作れます。軽度の咀嚼力低下がある方に適しています。

調理のポイントは、繊維を断ち切る方向に切る、根菜は下茹でしてから調理する、肉は薄切りや挽肉を使うことです。食材そのものの形が残るため、見た目の満足度が高いです。

きざみ食(コード3〜4相当)

食材を5mm〜1cm程度に細かく刻んだ食事です。噛む力が弱くなった方に多く提供されますが、実は注意点があります。細かく刻むと口の中でバラバラになり、かえって誤嚥のリスクが高まることがあります。きざみ食にはとろみをつけるか、あんかけにして食材をまとめることが重要です。

単に「刻んだだけ」のきざみ食は嚥下の観点からは推奨されません。食材をまとめる工夫とセットで提供しましょう。

ミキサー食(コード2相当)

食材をミキサーにかけてペースト状にし、とろみ剤でまとまりを持たせた食事です。咀嚼力と嚥下力が大幅に低下した方に適しています。均質で滑らかな食感で、口の中で食材がバラバラにならないため誤嚥リスクが低いのが利点です。

調理のポイントは、だし汁やスープで水分を加えてミキサーを回すこと、とろみ剤で適切な粘度に調整すること、食材ごとに分けてミキサーにかけて彩りを保つことです。

ゼリー食(コード1相当)

ゼラチンや寒天で固めた食事です。嚥下力が著しく低下した方に適しています。口の中で溶けて滑らかにまとまるため、最も誤嚥リスクが低い食形態です。離水(水分が分離すること)が少ない寒天やゲル化剤を使うことが重要です。

介護食の調理で大切な3つの原則

見た目・香り・温度にこだわる

介護食は見た目が単調になりがちですが、食欲の維持には見た目が非常に重要です。ムース型(シリコン製の食材型)を使って元の食材の形に整える、彩りの異なる食材を組み合わせる、器にこだわるなどの工夫で食欲を刺激しましょう。

香りも食欲に直結します。ミキサー食でも温かいうちに提供すると香りが立ち、食欲が増します。冷たいメニューは冷たく、温かいメニューは温かく、温度管理も大切な要素です。

栄養バランスを維持する

食事量が減ると低栄養のリスクが高まります。少量でも高カロリー・高たんぱくになるよう、バターやオリーブオイル、粉ミルク、きな粉などを活用しましょう。栄養補助食品(エンシュアやメイバランスなど)を間食として取り入れるのも効果的です。

市販品・配食サービスの活用法

負担を減らすための賢い選択

毎食手作りは介護者にとって大きな負担です。市販のレトルト介護食(1食300〜600円)や冷凍介護食は、種類も豊富で栄養バランスが計算されています。キユーピーの「やさしい献立」シリーズ、明治の「やわらか食」シリーズなど、大手メーカーの製品が充実しています。

配食サービスは1食500〜800円で、管理栄養士が監修した嚥下調整食を自宅に届けてくれます。自治体の助成制度を利用できる場合もあり、1食あたり200〜400円の自己負担で済むことがあります。

介護食への移行を本人が受け入れるための工夫

食事の形態が変わることは、本人にとって大きなショックです。「自分はもう普通の食事が食べられない」という喪失感は食欲の低下につながります。移行をスムーズにするには、まず一品だけやわらか食にする部分変更から始め、徐々に品数を増やしていく段階的なアプローチが有効です。

「食べやすく工夫した料理」として前向きに紹介し、見た目を普通食に近づける努力を見せることが大切です。また、好きな食べ物はできるだけ食べられる形態で提供し、食事の楽しみを維持しましょう。家族と同じ食卓で、同じ献立を食形態だけ変えて一緒に食べることが、本人の食欲と尊厳を守ります。

嚥下リハビリテーションにより、食形態を上の段階に戻せる可能性もあります。言語聴覚士(ST)による嚥下訓練を定期的に受けることで、嚥下機能の維持・改善が期待できます。「今の食形態が最終形」と決めつけず、リハビリの可能性についても主治医に相談してみましょう。

介護食に関するよくある質問

Q. 介護食は家族と別メニューにしなければいけませんか?

取り分け調理が効率的です。家族の食事を多めに作り、盛り付け前に本人の分だけやわらかく煮直す、刻む、ミキサーにかけるという方法なら、別メニューを1から作る手間が省けます。

Q. とろみ剤はどの飲み物にも使えますか?

水、お茶、ジュース、味噌汁など、ほとんどの飲み物に使えます。ただし牛乳や栄養補助飲料など、たんぱく質が多い飲み物はとろみがつきにくいことがあるため、とろみ剤の量を調整する必要があります。商品の説明書に記載されている適量を守りましょう。

Q. 食事中にむせたときはどう対応すればよいですか?

慌てて背中を叩かず、本人に前かがみの姿勢を取ってもらい、ゆっくり咳をしてもらいます。咳ができれば気管に入った食べ物を排出できます。食事を中断して落ち着いてから再開しましょう。むせの頻度が増えた場合は、食形態の見直しが必要なサインです。

関連記事